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第14話 オムレツを食べながら

作者: 柳 雪音
last update 公開日: 2026-06-14 06:27:08

「美味しい……!!」

凛はオムレツを一口食べて、思わず声を上げた。

「ふわふわで、卵とバターが引き立て合っていて、本当に美味しいです!」

白石はその言葉を聞いて、嬉しそうに目を細めた。

「一条さん、本当に美味しそうに食べるね。

 期待しちゃうな。俺も食べてみよう」

そう言って白石もオムレツを口に運ぶ。

「……うまっ!!」

「美味しいですよね?」

「うん、本当に美味しい。卵をこんなに使って大丈夫かなって思ってたけど、いくらでも食べられる」

「ですよね」

「……フォークが止まらない」

二人は無心でオムレツを食べた。

美食は、人を無言にする。

ひとしきり食べ終わり、白石はカランとフォークを置いた。

そして、凛を真っ直ぐに見つめ、はにかみながら言った。

「ありがとう。レシピを教えてもらって助かったよ」

「いえ……私までご馳走になってしまって、すみません」

「卵8個分だからねー。1人では食べ切れなかったよ」

「あはは」

凛は小さく笑った。

(こんなに和やかな時間は、本当に久しぶりだわ)

気の置けない人との、何気ないやり取り。

胸の奥に、温かいものがゆっくりと広がっていく。

凛は、この幸せを、心の奥でそっと包み込んだ。

時計の針まで、ゆっくりと進んでいるような夜だった

しかし——
こんな時間は、長く続けてはいけない。

凛は指先を握った。

「白石さんは、テレビはご覧になりますか?」

ワイドショーで連日、醜聞を報じられている女——それが自分だ。

凛の心は、ヒリリと痛んだ。

「テレビ?」

白石はキョトンとして答えた。

「ああ、ごめん。うちにテレビは無くて。

 ドラマやニュースには疎いんだ。

 最近、面白い話ある?」

(ああ……だから)

こんなにも「普通」に接してくれるのか、と凛は思った。

この幸せを、手放さなければならない。

凛の指先が、冷えていく。

それでも、伝えよう。

「……実は、私は……」

凛の声は、掠れていた。

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洗剤も、シャンプーも、歯磨き粉も。
どれも当たり前のものなのに、今の凛には、自分の暮らしを一つずつ取り戻している証のように思えた。同じ頃——黒塗りの高級車が一台、ドラッグストアへと近付いていた。 凛は知らなかった。自分が歩き始めた「新しい生活」が、
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「……だからかな」白石は、小さく笑った。「知り合いでも、そういう人がいたんだ」

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